先日、とある北海道を舞台にしたアニメを見ていたら、当館に所蔵している資料が登場しているではありませんか!この機に乗じて、今回のスタッフあれこれ日記ではそのアニメにも登場している「種繭雌雄鑑別器」を紹介したいと思います。
機械の説明の前に、「蚕種業」について紹介したいと思います。
蚕の卵のことを蚕種(さんしゅ)と呼び、蚕蛾を和紙などの上で産卵させ、蚕種の付着したその紙を蚕卵紙(さんらんし)と呼びます。
蚕の卵はこの産卵紙で保存・販売・流通されています。蚕蛾を産卵させ蚕種紙を製造する業者を蚕種業(さんしゅぎょう)といいます。
この蚕種を製造するためには、オスとメスを同じ数にわけ、交配させる必要があります。このために、雌雄を鑑別する必要が出るのですが、一般的には雌雄鑑別師と呼ばれる人の手によって、幼虫の時点で目視で雌雄をわけます。
その一方で、普及にはいたりませんでしたが、中に蛹がいる状態で雌雄を鑑別する器械も発明されました。それが「種繭雌雄鑑別器」です。
種繭雌雄鑑別器とは、蚕の蛹がオスとメスで重さが異なる(オスのほうが軽い)ことを利用して作られた器械です。
今回のスタッフあれこれ日記では、当館で所蔵している貴重な種繭雌雄鑑別器コレクションを紹介します。
まず紹介するのは、普及団式種繭雌雄鑑別器(ふきゅうだんしきたねまゆしゆうかんべつき)という器械です。
この器械は、1粒の繭の重さを量ることができます。重い繭は下がり、軽い繭は上がる天秤の原理を利用し、雌雄鑑別をします。松本市の大日本一代交配蚕種普及団(片倉)で考案され、使用された器械です。
次に紹介するのは、こちらの普及団式種繭雌雄鑑別器(ふきゅうだんしきたねまゆしゆうかんべつき)です。
この器械も、1粒の繭の重さを量ることができます。繭の中の蛹の重さを比較して雌雄鑑別を行います。大正5年、松本市の大日本一代交配蚕種普及団(片倉)で考案され、使用された器械です。
最後に紹介するのは、大沢式種繭鑑別器(おおさわしきたねまゆかんべつき)です。こちらの資料はどこかで見たことある人もいるのではないでしょうか。
この器械は回転式です。繭8個をそれぞれの皿に乗せて回転させ、雌が重く、雄が軽いという重さにより、落下する場所が異なるように作られており、雌雄を鑑別します。上伊那郡の片桐村大沢太郎氏が考案した器械です。
実際は人の目による鑑別が確実なので、普及には至りませんでしたが、雌雄を鑑別するために発明されたこれらの器械はとても面白い仕組みをしていますよね。
これらの資料は、農林水産省HP「明治150年特集ページ「蚕糸業」」でも閲覧できます。今回紹介した資料以外にも蚕糸業に関わる資料が公開されているのでぜひご覧になってみてください!