当館のカイコふれあいルームでは、“ある”カイコが、上蔟(カイコが繭を作り始め
ること)し、たくさん繭を作っています。
普通の繭とは少し違うのですが、皆さんは気づきましたか?
大きさが不揃いで、形も俵形のものもあれば、円形のものもありますね。
みなさんは「玉繭」という言葉をご存知でしょうか。
2頭のカイコが共同で1つの繭を作ったものを「玉繭」といいます。この玉繭は、
養蚕をしていると2~3%の割合で必ず出るものですが、繭から2本の糸が出るため、
糸をつくるときに必ず絡まってしまいきれいな糸が作れません。そのため通常はく
ず繭として、生糸を作る際ははじかれてしまいます。
この写真にある、大きくて丸っこい繭たちがまさに「玉繭」です。
当館で飼われている写真の繭をカイコは「珠里丸」という農研機構で開発され
た新品種です。
「琉球多産繭」という2頭以上で黄色っぽい繭を作るカイコがいるのですが、その
品種の遺伝子を組み替えて実用種として開発したものが「珠里丸」になります。
実用種?先ほどの話では、「玉繭」は、生糸を作る際にはじかれてしまう繭ではな
いの?と疑問に感じた人もいるのではないでしょうか。
実は、当館に併設されている宮坂製糸所(製糸工場)では、この「玉繭」から生
糸を作っているのです。
「玉繭」からとれた糸は、どんな糸になるのかというと、
こんな風に「節」とよばれる、ボコボコがある糸になります。この糸を「玉糸」
といいます。
このボコボコな「節」、風情や趣があって良いと、写真のような壁紙や帯の材料
として需要があるのです。
この玉糸を生産している機械を「上州式繰糸機」といって、宮坂製糸所で実際に
見学することができます。
宮坂製糸所にある「上州式繰糸機」は、平成9年に愛知県豊橋市の玉糸用製糸工場
から導入した繰糸機の改良版です。この機械は、玉糸の繰糸だけではなく、普通の
繭からも繰糸が可能です。写真は、普通の繭から糸をとっている様子です。
当館では、写真のように宮坂製糸所で実際に糸を生産している様子を見学できま
す。
ぜひ当館にいる、玉繭を作る「珠里丸」と、宮坂製糸所にある「上州式繰糸機」
の見学にお越しください。