令和6(2024)年度は、岡谷蚕糸博物館開館60周年、リニューアルオープン10周年記念となります。
3月の休館日は、3月5日(水)・12日(水)・19日(水)・21日(金)・26日(水)です。

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第四種蚕種とは?

岡谷蚕糸博物館では松本市にある蚕種(カイコの卵)を専門に扱う会社から、卵を購入してカイコを孵化させています。松本から岡谷まで、カイコの卵はどうやって送られてくるか、皆さんご存知でしょうか。

なんと、卵は普通の封筒に入れて送られてきます!通常と違うのは、「第四種蚕種」というハンコが押されている点です。

日本郵便のホームページを見ると、第一種は手紙、第二種ははがき、第三種は雑誌などの定期刊行物です。そして第四種は「通信教育用郵便物」「点字郵便物、特定録音物等郵便物」「植物種子等郵便物」「学術刊行物郵便物」といった、教育学術や福祉向上等のために特に低料金とされた郵便物のことです。カイコの卵は「植物種子等郵便物」に含まれます。

なぜ、カイコの卵が教育学術、福祉向上に役立つのでしょうか。農林水産省の「農業競争力強化プログラム」(平成28年)によると、養蚕業における蚕種は植物種子や苗と同様に養蚕農家にとって必要不可欠な生産資材であり、養蚕農家が減少している現在においても、養蚕業の生産性向上、ひいては伝統文化の維持継承等のために、第四種は重要な役割を果たしているとされています。

確かに、絹本(日本画が描かれている絹の布地)や文化財の修復に使用する素材としての絹は、原材料となるカイコを確保しなくては成り立たず、カイコが失われるということは、ひいては日本の伝統文化が失われるということにつながるのです。日本の絹文化の根幹であるカイコの存在は、こんなところからも守られているのでした。

それでは、第四種蚕種の封筒の中はどうなっているのか見てみましょう。中には小さな箱が一つ。「30粒」とは卵が30個という意味です。

白い紙の中には小さな黒い粒が入っています。この黒い粒がカイコの卵です。菜の花の種にそっくりな色や形をしています。

蚕種会社で(さい)(せい)(温度・湿度・光線などを調節した環境で保護すること)をしてくれているので、温度と湿度を保った気象器に入れておくと、博物館が指定した予定日にいっせいに孵化するのです。この催青もすごい技術ですね。

普段はなかなか目にすることのない「第四種蚕種」のハンコ。もし皆さんがカイコの卵を郵送で購入する機会があれば、ぜひ封筒に押してあるのを確認してみてください。

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