梅雨入りをした信州。
博物館の桑も、雨の恵みを受けてぐんぐんと葉を茂らせています。
当館の敷地内には9種の桑が植えられています。
あやのぼり、いちのせ、雲竜、大実、しだれ桑、軸無、せんしん、ちぢれ、みつみなみの9種です。その土地の気候に合うように、収穫量が増えるように、さまざまに改良されてきた桑をぜひ見比べてください。どこに植えられているか、探してみてくださいね。
現在博物館で飼育している春蚕は「せんしん」を食べて成長しています。
せんしんは関東から九州までの広い地域に分布し、栽培もしやすい優れた品種です。生え始めは柔らかく、みずみずしい黄緑色の葉も、だんだん濃い緑色に変わり、5齢の蚕は多少硬くなった葉も気にすることなく力強く食べ進めていきます。
こんなに美味しそうに蚕が桑を食べているのを見ると、人間も食べたくなってきませんか?人間が養蚕を始めたのは今から7000年前と言われているので、桑とのお付き合いもこの時期には始まっているわけです。
「桑の葉って体にいいの?食べると血糖値が下がるって本当?」
ときどきお客様からこんな質問を受けることがあります。
医学的なことは分かりませんが、昔から桑の葉茶が飲用されていることからも、蚕だけでなく、人間も桑と長いお付き合いをしていることが分かります。
奈良の正倉院には、碁局(囲碁の盤)の盤面に小口切りの桑の木の薄板を一面に貼り並べ、その木目を意匠に取り入れたものが収蔵されているそうです。桑は養蚕を支えるだけでなく、人間の文化芸術にも影響をもたらしてきたのですね。